現実世界で捕まえて

ふたりだけでワインで乾杯。

「遠慮しないで食べて。けっこうイケるよこの店。バレンタインのお礼だから」

「そんな、安いチョコなのに申し訳ないです」

「お礼は言い訳。土屋さんと一緒に過ごしたいだけ」

「平野課長」
私の目はきっとハートになってるでしょう。

「ふたりきりの時、留美ちゃんって呼んでいい?」

「……はい」

「留美ちゃん……あ、言った俺が照れる」

課長の笑顔ってどうしてこんなに爽やかで素敵なんだろう。
それはきっと惚れてるから。

食事はとっても美味しく
課長のリードで会話も弾み
仕事の話から趣味の話。色んな話をして楽しい時間は過ぎてゆく。

時間は8時半。
お腹がいっぱいだから少し歩いて、違うお店に移動。
商業ビルの裏の方に、美味しいカクテルのお店があるようだ。

私はフワフワしながら課長と歩く。
楽しくて嬉しくて靴に羽が付いてるかもね。

「あ、あれいいな」
信号待ちのショーウィンドにブランド物のネクタイが並んでた。

アイスブルーの上品なネクタイ。課長に似合いそう。

「プレゼントしましょうか?」
私のキャシュカードは無制限ですから。

「ありがとう。高いから気持ちだけもらうね」
課長は笑ってそっと手を伸ばし、大きな手で私の手を握る。

「留美ちゃんの手は、小さくて可愛いね」

もう幸せで限界です。泣けそう。
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