この青空が溶けて見えなくなる前に。
この青空が溶けたとき




大失恋をしてから数日が過ぎた。
今日は終業式でもあり、大ちゃんが学校最後の日でもある。




終業式が終わってからクラスで大ちゃんの送別会をやった。
色紙や花束をもらったりと大ちゃんは嬉しそうだった。




学校は半日で終わり、部活に精を出す声や姿を屋上に一人立ち眺める。
空は雲1つない青空が広がっている。




ガチャ




青空を見上げていたら背後から出入り口のドアが開く音が聞こえた。




足音で誰が来たのかすぐに分かった。
私はまだ振り返らずにふっと小さく笑った。




「…私達が初めて会ったのもこんな天気のいい日だったよね。
覚えてる?大ちゃん」




ゆっくりと振り返れば大事そうに花束を持ってる大ちゃんが少し目を見開いて立っていた。




「よく俺が来たって分かったな」


「分かるよ。大ちゃんの足音はすぐに分かるよ」




だってずっと近くで聞いてきたから。
大ちゃんが東京の大学に行って離れていても、忘れなかったんだから。




もちろん大ちゃんのことだって片時も忘れなかった。




「公園で遊んでたら犬に追いかけ回されて滑り台に逃げろって大ちゃんが助けてくれた時も、友里亜からもらったお揃いのキーホルダーをなくしちゃって一緒に探してくれた時も、大ちゃんが部活なくて一緒に帰ってくれた時も、いつもこれくらい天気がよかったよね。


きっと大ちゃんが太陽みたいに眩しい笑顔を見せるから、雨雲もどこかに吹き飛んでいってたんだよ」




少し強めの風が吹いた。
自分の髪が風になびくと共に、屋上の影から見知った髪が風になびいてるのが見えた。




誰がいるのか分かったけど、気にしないフリをした。



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