もっと、キスして



「雨だ。」


「ほんとだ〜…。傘持ってきといてよかった。」


「私折りたたみにしたんだよねー。」


ちっちゃいから濡れるだろうな…。


ああ、梅雨だなー…。


「梅雨だねー。」


驚いてちのをみる。

「なあに?」


「いま、めっちゃ一緒のこと思ってたのちのが声に出したから。」


「ほんとーっ?

うちらシンクロしすぎじゃんっ。」



帰りたくない。


さっきまで晴れてたのに。



まるでそれが、嘘みたいに。


「雷なるといやだな。」


「ちの雷怖いの?」


「逆に凛怖くないのっ?」


「別に。」


授業終わらないで。お願いだから。



この授業が終わったら今日はもう帰らなきゃいけない。




「じゃあ終わりまーす。」



先生がそう言って教室を出ていくと授業をまともに受けてなかった生徒たちが続々と教室を飛び出していく。



「凛?」



「え、ああ。帰ろっか。」



ちのの家と途中まで方向が一緒だからいつも話しながらゆっくり帰る。


その話する時間が私は一番楽しみで。


だけど。



今日は、その時間でさえ、うまく笑えてなかった気がする。



「じゃあまた明日。」



「うん。また明日。」



明日が私にくるかどうかなんて、分からないのに。



いま、うまく笑えてる?

< 67 / 187 >

この作品をシェア

pagetop