雪華



 しばし俺に魅入っていた娘が、少し微笑んだようだ。

 浅右衛門、もしかして今日の最後は娘だって知ってたのか?
 娘に合わせて、俺を用意したかのようだ。

 まぁ娘が満足してくれりゃ、それでいいさ。
 安心しなよ、俺はその辺の鈍らとは違うぜ。
 お前さんを、一瞬であっちに送り届けてやる。

 その俺の言葉に応えるように、娘の頬に赤みが差し、安心したような顔になった。


 浅右衛門に一礼し、娘が上体を倒した。

 浅右衛門、しくじるなよ。
 俺がこいつを、一番綺麗に送ってやるんだからな。


 しん、と静まり返った一刹那、浅右衛門が俺を振り下ろした。


 真っ白な土壇場に、ぱっと緋色の華が咲いた。



*****終わり*****
< 4 / 5 >

この作品をシェア

pagetop