Polaris
第1章 私の世界に踏み込んできてくれた人

『社会』とか『世間』とか、そういう人が集まってできる世界が苦手で、嫌いで、大嫌いで、それらに関わらずに生きていけるのならそれが一番だと思っている。

だけど、そんな生き方を出来るわけもなく、私は日々を『社会』と『世間』の中で生きていた。

出来ることなら、人となんて極力関わらずに生きていたい。そう思う私が、こんな世界の中で生きている。それはもう溜息ばかりの毎日だった……はず、なのに。


「京子、最近ちょっと楽そう」

ミルクティーをストローでかき混ぜながらそう言った、ブラウンの髪を緩くひとつに束ねている目の前の彼女は、私の唯一の友人である中村詩織(なかむらしおり)。

私と同じく28歳で、高校一年生からの友人である。

「え? そう?」

緩く巻いているロングの黒髪を耳にかけながら、とぼけたように目を開いて答えたのは私、唯川京子(ゆいかわきょうこ)。

巷で話題のカフェにやって来た私達は、オシャレな雰囲気と、クラッシックが流れる中でただ淡々と話をしていた。

「最近、携帯よく見てるし、何か楽しい事でもあったんじゃないのー?」

「別に、そんな事ないけど」

「いや、あるある。だって、あんなに携帯使わなかった京子が、最近一時間に一回はチェックしてるもん」

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