Polaris
「い、つき……?」
寝返って私を見た樹の表情が、いつもと違う気がした。……いや、〝気がした〟んじゃなくて、絶対に違う。
いつもなら、嬉しそうに笑って『キョンキョンだ』と言ってくれる樹。それなのに、今日は、目を丸くして驚いているような表情をしている。
「えっと……あの、すみません」
どなたですか? と言った樹の言葉が、頭の中に大きく響いた。
まるで、何かで頭を打たれたみたいに痛い。痛いくらいに、言葉が私の脳内で響き続けている。
「あ……ご、ごめんなさい。病室、間違えちゃったみたいです」
あはは、と笑った私。病室を間違えた、なんて適当な理由を作ったけれど、このまま病室を去るわけにはいかない。
何とかしないと……でも、何とかするって、どうやって……。
「どうしたの? 病室忘れちゃったとか?」
「え、あ……そんなところです」
少しだけ笑った樹に、私も笑って頷いた。すると、樹はクスクスと肩を揺らして笑い、ベッドから起き上がろうと体を動かし始めた。