ビターな洋菓子店

マドレーヌ




晴れたある日曜日の午後。ここ ” bitter ” はいつも通り呑気にそして無愛想に営業中。


「 あの、アドレス聞いてもいいですか‥‥? 」

そう言って恥ずかしそうに俯いている女性は、ここ最近よく買いに来てくださる方でどうも響さんにほの字らしい。

「 生憎ですがお断りしています。」

「 でも! そ、そんなしつこくメール送りませんし‥‥少しでもお近づきになりたくて‥‥ 」


女性の必死お願いにも関わらず、表情を一つも変えることない響さんは淡々とレジを打つ。

こういった事は日常茶飯事なのだが、どうもこの空気に恋愛経験の浅い私が慣れるはずもなく居た堪れない。

「 そう思うならまたお待ちしております 」

いつもと同じ冷たい営業的なセリフ。

こんな事言われれば私なら二度と訪れる事ないだろうな、と思いながらケーキを箱詰めする。
しかし、女性嫌いな響さんと共に働いている私は、もしかするとこの女性よりもしつこい人間だったのかもしれないな、と思うと頬が引きつった。





< 17 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop