【⑤おまけ】オオカミさんの新婚事情 上司とイキナリ結婚したら。
いきなりの退社、引っ越し、結婚の報告に、実家の家族は驚愕した。

父親と兄は激怒し、母親と兄嫁には心から心配された。

『ど、どんな奴だ、そいつは!挨拶もなく、結婚式の日取りまで決まっているなんて、聞いたこともない!』

父と兄は異口同音で叫んだ。

『燈子……あんた、騙されてない?』

『もう少し付き合ってから考えた方がいいんじゃないの?』

母親と兄嫁は、もっともな意見を述べた。


そんな訳だから4月の2週目の日曜、ビクビクしながら、二人してうちの家族に挨拶に行ったのだが…

恐ろしいことに、彼は私の家族一同を見事に蕩し込んだ。

まず母親と兄嫁は敷居を跨いだ瞬間に、彼のお得意、キラキラスマイルの虜になった。
元来惚れっぽい人逹なのだ。


焦った男2人だったが、いつの間にか持参していた“大好物” & “男同士の付き合い” というヒミツの接待により、いとも簡単に懐柔された。


『ふっふっふ。
仕事のキホンは入念な下調べと根回し、そして笑顔だよ。デキる男は違うんだ』

とは、後に彼が自慢気に話してくれた事だ。
私はそんな彼に、頼もしさとともに空恐ろしさを感じた。


実家に、ドッロドロの愛憎劇が始まらないことを祈る……
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