1ページ過去編
「大好きなんだ」

懸命に鳴く鈴虫の声に負けそうなほど、柔らかく囁かれた。

束ねたすすきを抱いた私へ、月見団子の載った大皿を抱えた彼に。

永遠を願う月の宴へと、向かう途中のあぜ道で。

ふわりと、微かで冷たい風が、私と彼の髪を揺らす。


これは…夢、ね。
ずっと前の夢。

私の、忘れそうなほど遠い記憶の、ずっと忘れられない夢。

だからこそ。
今が、私のおわりと悟った。

長い永い私の思い出の中。
はじめに抱いて、おわりまで忘れられない夢。

叶わない夢…。


そう、彼が好きなのは……。


私、では有り得ない。


ああ、夢が夢のまま、終わりませんように。

せめて、おわりの夢の中でだけでも…。
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