小夜啼鳥が愛を詠う
「フランスでは、みゆはちっちゃいから……。」
みゆちゃんはそう言ってから、私を見た。

「桜子さん、受験生でしょ?中学生にかまけてないで、ちゃんと勉強しないと後悔しますよ。……学校では、みゆが薫を独占するから、安心して、受験に専念してください。」

「はあっ!?何、勝手なことゆーとんねん!」

薫くんはカッカしてたけど、私には……むしろ、みゆちゃんが、ほかの女の子から薫くんをガードしてくれるような気がした。
まあ、都合よく考え過ぎかもしれないけど。

「ありがとう。みゆちゃん。……私の友達が、今、音楽学校に行ってるの。スクールとか、イイ先生を紹介したげるって言ってた。……もし興味があるなら、」
「お願いします!」

私が言い終える前に、みゆちゃんは深々と頭を下げた。

ふわふわの髪がふぁさっと波打って、すごく綺麗。

「……みゆちゃんなら、絶対素敵なフェアリーになれるわ……。」
そう感嘆したら、みゆちゃんは不思議そうに私を見た。

「桜子さんも充分、人外の者って感じ。みゆが何言っても怒んないんだもん。暖簾に腕押し?」

「……人外……。」

思わず、私も薫くんも光くんを見たのは……内緒。



「さっちゃん。そろそろ行こうか。」
光くんが校舎の時計を見上げて、そう言った。

「あ。ほんと。遅刻しそう。じゃあ行くね。薫くん、あとで。みゆちゃん、薫くんのこと、よろしくね。」

ひらひらと手を振ってそう言ったけど、薫くんはちょっと怒っているように見えた。

「あ、待って。写真、撮って!」
みゆちゃんは私の制服の上着の裾を引っ張って、そうおねだりした。

「写真……そうね。せっかくの入学式だもんね。看板の前で撮ろうか?スマホでいい?」

うなずくみゆちゃんを手招きして、門の看板の前に移動した。

「はーい。じゃあ、撮るよー。鳩が出ます……よ。」

「はと?」
みゆちゃん、変なお顔になっちやった。

光くんが笑ってカメラマン役を交代してくれた。
「さっちゃん。僕が撮るよ。普通に、はい、チーズ。」

みゆちゃんはかわいい笑顔を見せた。

「もう一枚!薫。並んだげなよ。」

光くんの指示を薫くんは一蹴。

「パス。」

……ぶれないわ、薫くん。
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