小夜啼鳥が愛を詠う
ねじれた恋慕
夏が来て、秋が過ぎ、年が明けても、玲子さんと成之さんが仲直りすることはなかった。

玲子さんは、これまで通りの自宅マンションに暮らし、お勤めを続けた。

4月からは、アルバイトではなく嘱託職員にランクアップしてもらえたため、ボーナスももらえるらしい。

うちにも以前より頻繁に遊びに来たし、薫くんや藤巻くんともますます仲良くなったみたい。

それに引き替え、成之さんはずいぶんとやつれて、老けてしまった。
玲子さんと住んでいたマンションには帰らず……かといって、本宅に帰ることともできないらしい。

成之さんは一週間ほどはホテルに滞在し、その後、パパの所有するマンションの一室に入居した。
家具も電化製品もほとんどなく、洋服だけは買い直したそうだ。



一年が過ぎた頃、ママが言った。
「成之さんの荷物とか洋服、実家に送りつけて、もうサッパリしちゃえばいいのに。」

ママは意外と強い女らしい。

「……あー。そうね。なっちゃんならそうするんでしょうね。」

玲子さんの苦笑に、ママは平然と言った。

「実際、したわよ。綺麗さっぱり。」
「え!?」

びっくりした私に、ママじゃなくて玲子さんが慌てた。

「ちょ!なっちゃん!さっちゃんがいるのにそんな話!」

でもママは、まったく動じなかった。
「桜子ももう子供じゃないから。ね。さっちゃん。」

ママにそう言われ、私はうなずいた。

てか、興味津々なんだけど。
ママは誰の荷物を送り返してのだろう。
パパじゃないよね?
……私の遺伝子上の父?

「……そう。そうね。なっちゃんは、強いわね。私は……つくづく心が弱いわ。成之にもう逢いたくないのに、完全には手放したくないというか……。思い切れない。」
玲子さんはため息をつきながら、そう言った。

私は、うんうんうなずいた。
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