瞬間、恋をした



「悪い! 用事思い出した!」

「は? おい、歩夢!どこ行くんだよ!」



アズマにそう叫ばれたけど、俺は構わず高梨さんが向かったほうへと走って行く。

影になっている校舎裏で見つけたのは、しゃがむ高梨さんの後ろ姿。


え、なにしてんの……?

おそるおそる、気がつかれないようにゆっくりと近づくと。

高梨さんの足元になにかがいるのだけはわかった。


あれって、野良猫?

そういえば最近、校内で猫を見かけたっていうやつが何人もいたような……。


とりあえず声をかけよう、そう思ったけど。

猫が動いたのと同時にこっちのほうを向いた、高梨さんの顔。


彼女はいままでに見たことのない、やわらかくて優しい笑顔で白猫の頭をなでていた。



「えっ……」



初めて見たその表情に、なんだか鼓動が速くなっていく。


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