彼女は僕を「君」と呼ぶ
僕にだけの内緒話
――はぁふ。
大きく息を吸い込んで欠伸を吐き、最後だけ飲み込んだ。
睡魔と言うよりかは、暇であったとのサイン。

あの後の彼女はいたくご機嫌で「先生が先生だった!」などと、当然な事を興奮気味に伝えてくれた。

暫し、彼女が話す小野寺教諭レポートを聞きながら、維の気疲れがどっと押し寄せたのは言うまでもない。

何事も、誰にも気付かれず、五限目は終了しただけでほっと一息つきたかったというのに、熱い言葉がつらつらと並べられて、返答がおざなりになる。それは仕方がないと許してほしい。
けれど、

「ありがとう。嬉しかった」

彼女の言葉の効力は恐ろしい。それで全てがチャラになってしまうのだから。

思わず顔を片手で覆って疲れではない他の何かが押し寄せた。
緩む口元は隠さなければならないだろう。

「いえ、お役に立てて光栄です」
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