あまつぶひとしずく




ぱくりとゼリーを食べる。

爽やかなさくらんぼの味が口の中に広がった。



「んー、美味しい」



静音に対してお礼を言おうとして、あたしは声を失う。

どうしたらいいかわからなくなって、静かに目を見開いた。



「っ、……」



彼女は、唇を噛み締めて、震えていた。



「し、静音⁈」



慌ててスプーンを置き、彼女の様子をうかがう。

目元にはぐっと力が入っていて、わずかに涙が浮かんでいる。



「ちーちゃんは、そんなんじゃないよ。
ちーちゃんは……ちーちゃんは、優しいよ。
綺麗で、かっこよくて、可愛い女の子だよ」

「っ!」

「だからそんなこと言わないで」



静音は、泣きそうになりながら、必死であたしに訴えた。

あたしのために、まっすぐだった。



……康太も。

康太もそうだった。



中学生の時に、男子が陰であたしのことを好き勝手言っていたのをとめてくれた。

そのままのあたしを認めて、そばにいてくれた。



だからあたしは康太の隣が心地よく、友だちとしていられたことが嬉しかった。



そんな彼と同じように、少し違う形で、静音はあたしを想ってくれているんだ。






< 12 / 32 >

この作品をシェア

pagetop