あまつぶひとしずく




ばかで、どうしようもなくて、ビジュアル詐欺師なんて言われちゃうようなあたしのことが、あたしはずっと嫌いだった。

中学校の時に周りにいた男子のことだって、みんなみんな大嫌いだった。

だけど、康太だけは違う。



出会った瞬間から大切で、大切な友だちで、康太と共に過ごした時間はあたしの宝物だ。



『ふたりが付き合うようになって嬉しいよ。
本当だよ』



この前、静音にこの前言った気持ちはうそじゃない。

ふたりが付き合うようになってよかったと思ってる。

ふたりが幸せそうで嬉しいと思ってる。



だけど、……だからこそ。



「康太、あたし寄るところあるから先に帰る!」

「は、え? 付き合おうか?」

「いらないよばーか!」

「はあ?」



康太に対して余計なことまで言って、彼より前に少し駆ける。

そしてくるりと身を翻して、叫ぶ。



「康太!」

「なんだよ!」

「好きだよ!」



君のことがずっと好きだった。

親愛からいつしか恋情に変わってしまったけど、好きだということは、確かな事実だった。



目を見開いて、康太は足をとめる。

あたしもその場で立ちどまった。



そして、康太は息を吐くように笑い声をあげた。

力が抜けたように、なに言ってんだとでも言いたげな表情で、



「俺もだよ!」



そう、あたしに応えた。






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