Fiore Zattera

アマレッティ


おとなしい子と言われるのが嫌いだった。

校舎裏の焼却炉近く。朝早い時間にそこに近づく人なんていなくて、私にとってそこは静かに読書が出来る空間だった。

「……死んでる?」

昨日までは。

太陽の光が校舎に遮られて、ちょうど陰になったところに寝転んでいた。
正確には、伸びていた。

春先とはいえ、いつからここにいたのだろう。死んでいるなら第一発見者になってしまう。

ひらひらと顔の前で手を動かす。目を覚まさない。
ぴた、と傷だらけの頬に指先をあてた。

「ん」

動いた。すぐに離して様子を見る。


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