百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


!


遥は、見たこともないぐらい弱々しい。


ど……どうしたの……?


動揺する私に、遥は、まるで子どものように私を抱きしめたまま、離れようとしない。


「……っ。」


私は小さく息をして遥の体に手を回した。

ぎこちなく、遥の背中を抱く腕に
力を入れていく。


「…遥…?大丈夫……?」


そっ、と囁くと

遥はさらに私をきつく抱きしめた。


どくん……!


心臓が大きく鳴る。

どきん、どきん、と遥にも聞こえるほど、
心臓の音が私の中で響く。


「……遥……?」


私が再び名前を呼ぶと

遥は顔をすっ、と上げて、私を見た。


目の前に、遥の整った顔が見える。


その瞳は、澄んでいて、どこか悲しそうで…いつか見た瞳と同じ色を宿していた。


遥が、ゆっくりと口を開く。


「お前なら…俺の過去も、傷も…。
全部受け止めてくれるのかもな。」


!


その言葉は、私の奥まで、すぅーっ、と
入り込んだ。


それは初めて見せる遥の“心の奥の言葉”で…

私は、遥の瞳から、目が離せなかった。


「………どういうこと…?」


私がそう、震える声で尋ねると

遥は私をまっすぐ見つめたまま黙っている。


その時

遥が、すっ、と私に近づいた。


!


< 194 / 512 >

この作品をシェア

pagetop