百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



…まだ、そんなことを言うの…?


私は、顔を上げて遥を見つめながら、はっきりと言い放つ。


「嫌……!私はここから出な………」


次の瞬間

遥が、ぐっ!と私の手を引いた。

体が、遥に向かって倒れ込むように引き寄せられる。


「────行け、詠。」


遥がそう、言った瞬間

遥が、ぐっ!と私に近づいた。


…!


遥が、そっ、と目を閉じた時

確かな、柔らかな感触が私の唇を塞いだ。

さらり、と綺麗な藍色の髪の毛が私の頬に触れる。


「……んっ…………!」


どくん!


心臓が、大きく音を立てて、世界が一瞬、時を止めた。


……何も、聞こえない。


「……っはぁ………。」


遥に塞がれた私の唇から呼吸が漏れて

遥が、すっ、と私から離れた。

そしてゆっくり口を開く。


「詠……俺、お前に会えて、よかった。」


………!


< 479 / 512 >

この作品をシェア

pagetop