居場所をください。




私は呼んだタクシーに乗り、

お寺近くの花屋さんで降りる。



なんのお花にしよう。

せめてお母さんの好きだった花とか

社長に聞いてくればよかったかも。


そんなことで電話もできないし。


はぁ、前も悩んだのに。


……………あの時は結局貴也が決めてくれたんだよね。

こうやっていちいち思い出がくっついてくる。

思い出したくないのに。


「お前なにしてんの?」


……………私?


「え、亜樹。

なにしてんの?花屋さんで。

女の子にプレゼント?」


「いや、ここ俺んち。」


「えぇ!それは…似合わないね…。」


「うるせーよ。

お前こそなにしてんの。」


「なにってお花選び。」


「いや、それはわかるっつーの。

何用か聞いてんだけど。」


「あぁ。

お母さんのお墓参り。」


「ふーん。

で、何悩んでんの?」


「どれがいいか悩む。

どれも綺麗だから。

それにお母さんの趣味とか全く知らないし。」


「ふーん。

じゃあお前の好きな花とかでいいじゃん。

お前の親なら、それでも嬉しいんじゃね。」


「なるほど。じゃあこれ。

名前すらわかんないけど

さっきからきれいだなって思ってたの。」


「墓参りならあと2色はいるな、

あと白と赤もいる。」


「へー、詳しいね。」


「花屋の息子だからな。」


「供えるお花はなんでもいいの?」


「まあ一般的にこれ、ってものはあるけど

それじゃなきゃいけないってわけじゃねーし

あんま固く考えなくていいんじゃね。

トゲとか毒がないやつで、自立する花なら。」


「ふーん…。

勉強になります。」



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