居場所をください。



「美鈴、旅館とれた。」


「え!嘘!ほんと?」


「露天風呂付き老舗旅館。」


「うわー、高そー。」


「もともと安いところは探してない。

こういうとこの方が客のプライバシーは

きっちり守るからな。

俺と美鈴が一緒に旅行なんて

それこそ噂されたら困る。

会社の人間でも俺らが兄妹知ってるのは

俺らと社長抜かせば佐藤と貴也と隼也だけ。

噂になったらみんなは確実に

俺らが付き合ってると思って

美鈴は事務所にいられなくなるし、

俺ももう下のやつらになにも言えなくなるからな。

他は美鈴が完璧に変装すりゃいいけど

宿泊先ではそういうわけにもいかねーし。

ビジネスホテルみたいなところなら話は別だけど

そんなとこ嫌だろ?」


「うん、そうだね。

納得しました。」


「寝るとこ一緒だけど我慢しろよ。」


「別にいいよ。

長曽我部さんだし。」


「まぁたとえ血が繋がってなくても

この歳の差じゃあな。」


「若いのも魅力的だけど。ねぇ。」


ちょいちょいひどいよね。


「交通の便は悪いから車な。」


シカトかーい。


「いいよ。」


「渋滞ハマった時用にDVDでも撰んで

持っていけよ。

明日の朝出発して、

明後日の昼に向こうを出て

夕方にはこっちで初詣、ってとこだな。

隼也、夕方にしてくれっていってたし

ちょうどいいわ。」


「ふふ、楽しみ~。」


「早く寝ろよ。」


「はーい。」



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