居場所をください。



━━下へ降りると、

マンションの前には

お馴染みの黒い車…ではなく

真新しいミニバンの黒い車が一台とまっていて

運転席ドアに寄りかかりながら

スマホを片手に立つお兄さん。


佐藤さんもそうだけど

長曽我部さんはいつもこの姿勢で

私たちを迎えてくれる。


「おう、お疲れ。」


「疲れてないし、

プライベートなんだからそれやめてよね。」


「それもそうだな。」


なんて会話をする頃には

私はもう、助手席へ乗り込んでいた。


「へー、後ろじゃねーんだ?」


「だって私が貴也と座ったら

隼也が一人になっちゃうじゃん。

高橋と弘希と亜樹は貴也と仲良しだし

貴也が隼也と座れば

自然と話せるでしょ?」


「なるほどな。

よく考えてんだな。」


「それに、

……弘希がすでに後ろに座ってたから。」


今日、長曽我部さんと弘希と里美さんは

一緒に過ごしてるんだろうなぁとは思ってたけど

助手席には弘希がいなかったから

予想外れかと思ったけど

一番後ろに、弘希が座ってた。

貴也はその横に座ったし、仲良しだねぇ。


「ケンカでもしてるの?」


「は?してねーけど?」


「じゃあ弘希はなんであそこ?

ここか、一列後ろでもいいじゃん。」


「さぁ?」


「ふーん、まぁいいけど。

それより車来たんだね。」


「そ、何日か前に納車したけど

美鈴は見るの初めてだな。」


「うん。」


長曽我部さんがファミリーカー。

……似合わない。


変な感じ。



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