ヒミツの関係

また変わる…?

 ノックをした直後、中から


 「入っていいぞ。」


 そう聞こえた。

 なんだか久しぶりに感じてしまう低い声。

 そんなはずないのに…

 あたしは大きく息を吸って、ドアノブを握った。

 ドアを開けると十夜はこっちに背を向けて何かしている。


 「誰だ?」


 背を向けたまま聞く先生に、わざとじゃないかと悲しくなるより何だかイライラし、ドアを閉めて鍵を掛けた。

 音も無く閉まる鍵。

 十夜を見ると、まだ背を向けたまま、

 
 「磐田か?」


 などと言っている。

 あたしは十夜に近付くと勢いよく、強く後ろから抱きついた。

 
 「霞!」


 
 今だけ、そう呼んでもいいよね…?



 あたしの震える声に振り返ろうとした霞の動きが止まる。

 
 「郷原…?」


 心なしか、霞の声がいつもより低くなって聞こえた。


 「霞!
 お願い!最後だけお願い聞いて!! 
 そしたらもう諦めるから!」

 
 あたしは霞が動かないのをいい事にさらに力強く霞に抱きついた。

 腕が震えて、足も震えて、全身が震えてるのか、霞が震えてるのか分からない程だった。

 
 「お願いって…?」


 霞の声が聞こえて、あたしはこれ以上にないほど腕に力を入れて、言った。


 「あたしの目を見て、嫌いって言って…
 そしたら諦められる気がする…」

 
 霞の香水を感じながら、声が震えるのを押さえもせず、低い声で言った。

 霞が下を向く。

 それに気付いたあたしは、霞から腕を離して顔を覗き込む。

 逸らそうとする顔を両手で包んで、無理やり目を見る。

 霞が、目を見開く。




< 41 / 43 >

この作品をシェア

pagetop