私の途絶えた記憶の中で
無知
ガラッ

「いらっしゃい!」

店内に入ると、いかにもラーメンを作ってそうな容姿の男の威勢のいい声が聞こえてきた。

爽真は空いている席に座った。

私はその前に座った。

「店長! 特製とんこつラーメンひとつ!
ちはるは?」

爽真はここに来るのが初めてではないようで
メニューを見ないで注文した。

「私も、同じのでいいよ。」

私はそう答えた。

「了解。あっ、やっぱ2つで!」

なんで、ここなんだろう。

私が行きたがってたって爽真は言ったけど
疑ってしまう。

なぜなら私はラーメンがあまり好きではないからだ。

元々、麺類は苦手だった。

小学生の頃、私はいじめられて、ミミズを口の中に無理やり入れられた記憶があり、
それがトラウマになっていたからだった。

そんな私が本当にそんなことを言ったのかな。

わからなかった。

爽真は黙って何かを一生懸命いじっている。

「何いじってんの?」

私は聞いてみることにした。
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