この世で一番嫌いなものは「自分」。
急いで顔を洗い、朝ご飯を食べる。
「起きてたんならもっと前から準備すればよかったじゃない。」
お母さん!ごめん!今そんなにゆっくり話してる時間ないの!
猛スピードでご飯を食べ終え、自分の部屋のある二階に駆け上がる。
ドアを開け、とりあえず制服を着る。
部屋を見渡してみるとやはり懐かしい。
机の引き出しを開けてみると、ノートのような物が1冊だけ、ポツンと置かれていた。
ノートを手に取り中を見ようとしたが、お母さんの「唯歌ちゃん来たわよー!」と言う声を聞き、そのノートを自分の鞄に突っ込んだ。
「今行くー!」
ちょっとまって。緊張してきた。久々に唯歌に会える。
泣いちゃうかも。
「梨華ー!おはよ。」
柔らかい笑みを浮かべて少し遠慮気味に手を振る貴方は、何も変わらない。確かにそこに唯歌はいた。
「唯歌ー!!おっはよー!」
しまった。抱きついてしまった。
「あはは、梨華、朝から元気だね!」
唯歌は優しく微笑みながらそう言った。
感動で泣いてしまいそうになっている私の事を不思議そうに眺めている唯歌。
また抱きつこうとしたらお母さんが「早く行かないと遅れるよー。」と言ってきたので、とりあえず「行ってきます。」と言い、家を出た。
懐かしい。
この景色も、この会話も、全ての事がとても懐かしかった。
「梨華?聞いてる?」
唯歌が不思議そうにこっちを見ていた。
やばい。聞いてなかった。
「ごめんごめん。何だった?」
「だからー、今日の梨華、変だよって話!」
「はぁ?」
急に真剣な顔で言ってくるから何事かと思った。
「別に変じゃないよ?唯歌が好きすぎるだけ!」
そう言った私の方を、悲しい顔をしながら眺めていた唯歌。
私は、何かまずい事でも言ったかなと思い、「ごめん。」と言った。
そしたら唯歌は「ん?何が?」と、先程の顔なんて無かったかの様に笑ったんだ。
それとなく気にしてはいたが、普通に戻った唯歌に安心し、だんだん頭の中から消えていった。
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