わたしは元婚約者の弟に恋をしました
息を吐くと、天を仰いだ。
白っぽい空を仰ぎ、もう一度、今度は細く、長く息を吐いた。
一晩経っても、心の中はすっきりしないままだった。おまけに昨夜は雄太から連絡がくるのではないかと何度も携帯を確認して寝付けなかった。
背後から肩を叩かれ振りかえると、長身でロングヘアの女性が自信に満ちた笑みを浮かべて立っている。
「おはよう」
わたしはオウムのように同じ言葉を返した。
彼女は同じ会社で働く同僚だ。
「昨日、何してた?」
彼女、高橋仁美はからかうように問いかけた。
昨日の女性の涙を思い出しながら、短く息を吐いた。
「家にいたよ。少し買い物もしたけど」
「彼氏とデートでもしていたんじゃないの? もう付き合い始めて一年なんだよね」
からかいを含んだ言葉が胸にちくりと刺さった。
わたしはその痛みに気づかない振りをして、曖昧に微笑んだ。
彼女は会社で最も親しい友人だ。だが、タイミングが合わなかったため、彼の両親に挨拶をしにいくと言っておかなかったことが不幸中の幸いだ。彼女自身、雄太とは何度か面識があった。
「本当、良いよね。そろそろ結婚とか考えないの?」
「まだ早いよ」
「結婚に乗り気じゃないのはほのかのほうだったんだ。うかうかしていると誰かにとられちゃうと思うよ」
わたしを思ってくれた、もしくは普段なら冗談だと受け止められる言葉も、今は胃の中をえぐる凶器と化していた。わたしはその言葉の重みを感じながら、あいまいに微笑むことしかできなかった。
白っぽい空を仰ぎ、もう一度、今度は細く、長く息を吐いた。
一晩経っても、心の中はすっきりしないままだった。おまけに昨夜は雄太から連絡がくるのではないかと何度も携帯を確認して寝付けなかった。
背後から肩を叩かれ振りかえると、長身でロングヘアの女性が自信に満ちた笑みを浮かべて立っている。
「おはよう」
わたしはオウムのように同じ言葉を返した。
彼女は同じ会社で働く同僚だ。
「昨日、何してた?」
彼女、高橋仁美はからかうように問いかけた。
昨日の女性の涙を思い出しながら、短く息を吐いた。
「家にいたよ。少し買い物もしたけど」
「彼氏とデートでもしていたんじゃないの? もう付き合い始めて一年なんだよね」
からかいを含んだ言葉が胸にちくりと刺さった。
わたしはその痛みに気づかない振りをして、曖昧に微笑んだ。
彼女は会社で最も親しい友人だ。だが、タイミングが合わなかったため、彼の両親に挨拶をしにいくと言っておかなかったことが不幸中の幸いだ。彼女自身、雄太とは何度か面識があった。
「本当、良いよね。そろそろ結婚とか考えないの?」
「まだ早いよ」
「結婚に乗り気じゃないのはほのかのほうだったんだ。うかうかしていると誰かにとられちゃうと思うよ」
わたしを思ってくれた、もしくは普段なら冗談だと受け止められる言葉も、今は胃の中をえぐる凶器と化していた。わたしはその言葉の重みを感じながら、あいまいに微笑むことしかできなかった。