わたしは元婚約者の弟に恋をしました
「繰り返しになるけど、君はどうしたいんだよ。このままじゃあいつはまた傷ついてしまう」

 彼の険しい言葉は一年付き合ったわたしでも初めて聞くものだった。

 それは彼にとって聖が特別だと物語っていた。

 彼の家の事情は雄太に今聞いた以上は分からない。だが、それはわたしが踏み入ってどうにかなるものでもないのだろう。そして、聖をある意味で裏切っているわたしができることは一つしかない。


「別れるよ」

 わたしは声を絞り出した。

 心の中の決意と、言葉に出すのでは意味合いが全く違う。

 もう言い逃れもできなかった。

「近いうちに別れるから、聖には言わないで。わたしも彼を傷つけたいわけじゃないの」

「分かった。もう何も言わないよ」

 雄太はそれ以上は何も言わなかった。


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