この先の君を見るために

穴の空いた心



「どうしたんだろうか。」




俺は勉強机に座りながらポツリと呟いた。



清水さんが変な質問をしてきた日、帰りのバスで彼女と会うことは出来なかった。



それだけじゃない。あの日から1週間が経っているのに彼女と1度だってバスで顔を合わせていないのだ。


この不安のせいで、俺は唯一得意な勉強にすら力が入らないでいた。



来週定期テストがあるのに、このままだと1位は愚か、3位以内にも入れないかも知れない。


焦りと不安を抱きながらも、翔はシャープペンを走らせていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~



あれからどれくらいが経ったのだろうか。


いつもなら勉強をしていれば時間はあっという間にに過ぎていくのに、今日は1段と時間の進みが遅い気がした。


あの日、ちゃんと連絡先聞いておけばよかった。



小さな後悔が大きな後悔に変化した事に気づきながら、俺は握っていたシャープペンを音をたてながら机に置いた。


仕方が無く勉強を止めてパソコンを開いく。



特に気になる事も無いため、適当にトップページを流し見ていると信じられない記事が目に入ってきた。



[交通事故で女子高生死亡。〇月〇日、〇〇県〇〇市で女子高生が大型トラックに跳ねられ、昏睡状態が続いていたが昨晩死亡。被害者の名前は清水 爽香さん高校一年生 _______]




信じられない。彼女が....死んでいたなんて。



記事には写真も乗ってあり、何度も見直したが間違えなくそれは彼女の顔だった。



別に彼女とは、特別親しい仲では無かった、付き合ってるわけでもないし、知り合ってまだ日が浅い訳なのだが....


つい最近に喋っていた人物の死というものは、俺のこれまで送ってきた日常の中で、ショックを受けるには充分なくらの破壊力だった。



だめだ、自分の思考が停止して行くのがわかる。



このまま起きていても嫌なことを考えてしまうだけだと思った翔は、急いで勉強道具を片してベッドに潜った。



もし、もしもあの日に戻れたなら、俺に出来たことはあったのだろうか、


あの日、俺が勇気を出して何処かに誘っていれば彼女は助かったのかも。


いや、彼女は帰りのバスに乗ってこなかったんだからどこにも誘うことは出来ない。

だったら連絡先を交換して居れば、それともあの質問に答えられていれば、彼女は帰りのバスにも現れたかもしれない。


寝ようとしてもしつこい位に色々な考えが浮かび上がってくる。



もし、あの日に戻れたなら______。



長い間悩まされた俺は、急に襲ってきた睡魔のおかげで、ようやく眠りにつくことが出来、深い眠りに落ちていったのだった。


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