大きな背中と…


彼の手は

大きくて男性の手で

少しゴツゴツしていて

とても温かかった。

その手で頭をなでられると

不機嫌な私は一気に機嫌が良くなって

彼は笑う。

「ごめんな」

そう言いながら

そんなことを言われてしまえば

許さないわけにはいかない。

優しいくせに意地悪な彼に

私は惚れていた。

「なぁ、秋乃」

休み時間。

あれから喋りかけてこなかった綾人からの

いきなりの呼び出し。

『…なに』

そう、聞くと

バッと頭を下げて

「この前はごめん!俺、秋乃に嫌われたくないから……秋乃の事が好きなんだ」

そして、いきなりの謝罪にいきなりの告白。

告白?

ん?告白?

追いつかない頭をできるだけ回転させる。

『何言ってんの』

そんな問いかけも無視して

「俺と付き合って!」

と、右手を差し出される。

そんなの答えは決まっていて

『やだ』

その一言しかない。

「な、なんで?俺、かっこいいし、一途だし!」

その、絶対振られないという自信はどこからくるものなのか。

『だから?私…顔で選ばないし』

そういうと、あたふたして

「か、彼氏いるとか?」

『彼氏は……いない』

そう言うとキラッと目を光らせて

「なら!」

と、いってくるが

その発想には普通ならないし

彼氏がいないからと

適当に付き合うものではない。

『……好きな人いるから』

そう言うと、

「え、まじで…。俺失恋?いや、あきらめねーよ!」

と、1人私の前で百面相をしている綾人に私は思わず

『ふっ…』

と、我慢できなかった笑いがこみ上げてきた。

『ほんっと、馬鹿!1人で百面相しないでよ』

そう、綾人が差し出していた掌をパチンと弾き笑いながら言うと

「わらった……可愛い……」

そう、いってくる綾人は

可愛いくらいに頬が赤かった。

「ちょ、ごめん」

と、手で顔をかくす綾人。

そんな綾人にこっちまで恥ずかしくなって

『馬鹿、帰るからね』

そういい、そそくさとその場を退散しようとすると

「秋乃は笑ってるほうがいい」

ぽんぽんと頭を撫でられる。

私はとっさに頭に手をおいて

先に行く綾人の背中をみつめる。

『…癖が』

同じ…。

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