ボーイズロード ―first season―
駅に着くと、すでに石川の兄ちゃんは待っていた。

見たことある人だなと思った。そうだ、緑中野球部で四番を打っている石川だ。

なんだ、石川の兄ちゃんだったのか。


俺らの一つ上だったっけ。緑中の練習試合は何度か見たことがある。


石川の兄ちゃんの引退試合を俺は見ることができなかったけど、賢太くんの学校と対戦しているはずだ。

どっちみち、野球部ではない俺のことは知らないと思う。


「はじめまして。若月です」

「晴菜、彼氏いたの?送ってくれてどうもな」

「やだ兄ちゃん。違うよ、友達」

あっさり否定されたのが悲しかったけど、だけど今は仕方ない。


「じゃあ、また学校でね」

二人の後ろ姿が改札の奥に消えてしまうと同時に、夢から醒めたみたいに周りの景色が変わってしまった気がした。

< 324 / 406 >

この作品をシェア

pagetop