華麗なる人生に暗雲があったりなかったり

負け犬との別れ








 式場に着くと、当然他は全員揃っていた。



「あら~俊君。久しぶり。一年も会えなくて私の心は日照り続きだったのよ。すっかり、やつれたでしょ?」



 相変わらずのおばさんだった。



「お久しぶりです。お元気そうで何よりです」



 おばさんの言葉は無視し、元気の部分を強調した。



「スーツ姿も素敵だわ。後で一緒に写真を撮りましょうね。私の留袖姿も素敵でしょう?」



 俺の言葉も綺麗に無視された。



「ええ。見た目と内面にかなり食い違いがありますけど」



「何だか引っかかる物言いだけど良いわ。佳苗さんのご両親にでも挨拶してきたら?」



 おじさんと三人で話しているのが佳苗の両親だろう。


 遠目で見ても、佳苗の雰囲気と同じく大らかさを感じる。


 赤の他人の俺がいても気分を害した様子がない。


 むしろ、佳苗と仲良くしてくれてありがたい、居心地が悪いだろうに来てくれてありがたい……そんな具合だった。


 用意ができたようでチャペルに通される。


 真っ赤な絨毯。


 オルガン。


 十字架。


 どれも普通の協会にあるものだな。


 当たり前だけど。


 長いすにもたれながらステンドグラスを眺めていると、水野が入ってきた。


 ようやくお出ましか。



「榊田君、姿勢悪い!」



 また説教か。


 俺はもたれたまま水野を見上げた。


 軽く目を見張る。


 水野はどちらかと言えば可愛い部類に入る。


 綺麗という雰囲気ではない。


 だが、しっかり化粧をし、ドレスアップした水野は綺麗だった。


 こうも雰囲気が変わるものか、化粧は怖いな。


 だが、綺麗な水野を見るのも悪くない。


 俺の隣に水野は座った。





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