華麗なる人生に暗雲があったりなかったり





「……なぁ?良くわからないが、俊、水野さんに片思いしてるのか?」



 恐る恐る聞いてくる黒澤を鋭く睨みつける。



「そうなんだよ~こいつの片思いが三年目に突入したんだ!喜ばしい限りだ!!」



 広也は陽気に俺の肩をバシバシ叩く。


 余計なことを。



「片思い三年目って。水野さんと付き合ってるだろ?一年の頃から」



 安住が首を傾げる



「それはこいつが男除けに、小春ちゃんを丸め込んで偽彼氏になってるだけなんだ!」



 広也の発言に二人が引いたのがわかった。


 実際、俺から一歩離れた。



「うわっ。俊がそういうことやると、一層怖い。ストーカーより性質が悪い」



「水野さんが別の男と付き合うことになったら、その男を素知らぬ顔で闇に葬りそう」



「それで、小春ちゃんには『あいつは旅に出た。もう帰って来ないから忘れろ』とか、しらっと言うに決まってる」



「恋は古今東西罪なものなんだ、とか気色悪いこと言ったりしてさ!」



「ははっ!言いそう。真顔で」



「確かに!俊が言うと、どう突っ込めば良いのかわからないから困るよな~」



 俺が冷ややかになっていくことに気づかず、三人は好き勝手言い始めた。


 女嫌いじゃない、人間嫌いになりそうだ。






















「……お前ら、俺は帰るぞ」



 痙攣を起こした口が辛うじて動いた。



「冗談だ!何だか、俊に親近感が持てたよな!女なんて向こうから寄ってくる、って言っていた俊が」



「その通りだ!一人の女の子をずっと思い続けるなんて一途だ!どうして、こうも女はしつこいんだ、って言っていた俊が」



「女で苦労する経験は良いことだぞ!一回りでかくなれる!女で苦労と言えば、女が絶えず寄ってくることだ、って言っていた俊が」



「……お前ら。絶対、いい気味だと思ってんだろ?」



 それは被害妄想です!と笑顔の三馬鹿が口をそろえた。


 どれもこれも水野が原因なのは気のせいではない。


 真の疫病神はあいつだ!!












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