華麗なる人生に暗雲があったりなかったり

女難





 次の日、バイトに現れた水野は、晴れやかだった。


 いつも通りの笑顔で挨拶をしている。


 何故か、広也と一緒に買い物袋を大量に提げての登場だ。


 苦々しいこと、この上ない。


 広也の馬鹿丸出しの話術に嵌ったか。


 腹が立つが、水野が笑っていることに安堵した。


 それから、年が明け、初詣に出掛けた。


 仁とどうなったか気になった。


 遅かれ早かれ、くっ付くのがわかっているのに気になる。


 死刑宣告を自ら聞くようなものだ。


 だが、気になるのだから仕方あるまい。


 死刑確定日は、テスト後だ。


 テストがずっと続けば良い。


 広也と上原が代わりに、廃人になるだけだ。


 クリスマスが嘘のように、本来の水野に戻っている。


 転んでも、起き上がり走り続ける。


 格好悪かろうが、無様に走り続ける。


 恐れ入ることだ。


 そんなのに惚れた俺は、まさしく女難の相が出ているに違いない。


 厄払いを真剣に悩んでいるというのに。


 女難の相の根源は、



「厄払いしても無駄。まったく無意味。効果なし」



 馬鹿馬鹿しそうに、手を振った。


 カチンときた俺は、



「お前の恋愛成就のお守りと一緒だな」



 と嫌味を言ったら首を絞められた。


 どうしてこんな女に俺は惚れているのか。


 首を締め上げられながら見上げた空はどんよりしていた。


 このどんより空より重たいものが、これからすぐに水野に降り注がれることになる。


 それに俺が気付いたのは、少し後。




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