華麗なる人生に暗雲があったりなかったり



 とにかく、暴れ馬を引きずりながら、鬱陶しい女から逃げ出した。


 どうして助けようとしたのか。


 こいつの場合は助ける必要がなかったが。


 たぶん、それは少し好みのタイプだったからだ。


 それは認める。


 だが。


 こんなのはどこにでもいる。


 何も言わずにさっさと帰った。


 これ幸いと。














「榊田俊君だよね?空手サークルの飲み会でお世話になった水野です」



 大学で水野に声をかけられた。


 四月下旬のことだ。


 空手が本当にやりたいのがわかったから道場を紹介した。


 以後、一緒に過ごすようになった。


 大学とバイト先も同じであるからそれは必然だった。


 一ヶ月ほどで、水野がどんな人間かが何となくわかった。


 こいつは正義気取りのお節介なやつだ。


 道場で、ガキの喧嘩の仲裁にいつも入る。


 喧嘩を見つけると、どんなに遠くにいても一番に駆けつけた。


 それは水野の役目じゃない。




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