華麗なる人生に暗雲があったりなかったり

彼女のせい?俺のせい?






 佳苗と会った翌日。


 二限が体育の授業だから、少し遅れ学食に着く。


 すでに四人は食べ始めていた。


 いつも通り、広也の隣に座る。


 すると、斜め向かいに座っていた水野がヨーグルトを差し出してきた。



「何だ?」



「昨日誕生日だったんだって?今、広君から聞いてびっくりしたよ。おめでとう」



 で、ヨーグルトか。



「ずいぶん安いプレゼントだが、ありがたく受け取っておく」



 こういう些細なことでも嬉しく思えるのだから不思議だ。


 たかが、ヨーグルト一つで。


 俺って、意外と単純な男だな。



「言ってくれれば、もっとまともなプレゼント用意したのに。今までの迷惑料も兼ねて」



 唇を突き出し、水野は言った。


 誕生日を教えなかったことに気分を害したみたいだ。



「ということは、お前は一人で寂しく過ごしたわけか」



 広也はおおげさに俺を哀れんだ。



「いや、夕飯はうまいもの食べた」



 しかも仁のおごりだ。


 あの金の出所は仁だと佳苗は言った。


 佳苗が楽しめるならと、俺との夕食代を出してくれたと言っていた。


 はにかんだ様子で話す佳苗は、その仁の心遣いだけでおなかがいっぱいのようだった。


 俺はそんなのでおなかは膨れなかったから、たくさん注文した。


 佳苗は俺の食欲に驚きながら、



『仁と言い俊君と言い、そんなに食べて良く体型維持できてるね』


 と、感心した様子だった。



「うまいものって、どこかに行ったのか?」



「ああ。昨日は前々から一緒に飯を食う約束をしてたんだ」



 箸で豆腐を掬い口に放り込む。


 腹が減っているのに容赦なく質問が浴びせられる。


 だが、俺の才能か会話をしつつ、どんどん皿の中身は減っていく。


「誕生日に?友達か何か?」



 上原はいささか驚いたように聞いてきた。


 別に誕生日だろうが何だろうが俺には関係ない。


 どうして、こうも誕生日を一大イベントと捉えるのだろうか。


 不思議な現象だ。




< 98 / 207 >

この作品をシェア

pagetop