香りから始まる恋はいかがですか?


タクシーが
俺の自宅前に着くと

さっちゃんは、
おもむろにお財布を出し、
運転手さんに
お金を渡していた。

あまりにスムーズで

「なっちゃん、
そんなのいいから、
ほら、先に降りてよ」というと、

「いえ、
ここは出させてください」
と聞かず、

彼女は、そのまま
タクシーを降りてしまった。

俺もタクシーから降り、
鍵を開けると玄関から
紗智が飛び出してきた。

「おかえりなさい、健太
なっちゃんは?」

といい、

なっちゃんの姿を探した。

俺の後ろにいたなっちゃんは、
「夜分遅くにごめんなさい」
と言い、紗智に頭を下げた。

すると紗智も
初めて見たなっちゃんの姿に
少し驚きながら、

「なっちゃんもお疲れさま!
ほらほら、入って」と
いたって、明るく振る舞っていた。

なっちゃんは、
静かに「お邪魔します」
といい、俺たちの後に着いてきた。
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