ストボー
第1章
野球の審判が趣味で生きがいの歴山さんという初老で真面目を地でゆくおじさんがいた。
歴山さんはストライクゾーンが驚くほど曖昧であった。
ある地方野球大会の球審を務めていたときホームベース上でワンバウンドしたボールをストライクと思い切りコールした。次のボール、ど真ん中のストレート、キャッチャーのミットにズドンと吸い込まれた。
ボール、と判定した。
当然、攻撃側ベンチからは、えーー、とブーイングの嵐。
次のバッターのときの第1球目、ピッチャーの投げたボールはホームベースの手前20センチメートルでバウンドし、キャッチャーミットへ、
歴山さん、スット、?、ボーーー、!!、
両軍ベンチから一斉に、どっちやー、のクレーム、試合が中断した。
歴山さん、この町の野球大会から忘却の彼方へと消えていった。
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