婚約者は高校生
デート(仮)

俺に婚約者がいる、という情報は瞬く間に広がり、一週間もすれば社員で知らない者はいないというぐらいになった。

しかし、だからといって業務内容が変わったわけでも、忙しさが変わるわけでもない。

ただ少し…いや、かなり周りが騒がしくなったのは確かだ。

俺を見るなりこそこそと何やら会話を始めたり、泣きそうな目で見てきたり、刺さるような視線を投げてきたりする社員(圧倒的に女子が多い)がいる。


まったく。
何が仕事に集中できるようにする、だ。

確かに俺を誘おうとする女子社員は減ったが、あの発言のせいで社内にいる限りどこにいても視線を感じるぞ。


デスクで書類をめくりながらため息をついていると、山科がファイルを手にやって来た。



「いや~部長、皆さんの視線を独り占めですね」



「別にそんなことはしていない」



「またまたぁ。ここ最近は部長の話で持ちきりですよ。噂の婚約者さんってどんな方なんですか?僕も興味ありますね~」



興味がある、ね。
だが答えるつもりはない。
ただでさえ騒がしいのに余計なことを言ってさらに騒がしくするつもりはない。

それよりも今は仕事だ。

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