魅惑な彼の策略にはまりました
外に出て、震えながら、今度こそタクシーを捕まえる。


「暖房、マックスで」


車内の時計は23時45分を指していた。
早く熱いお湯を浴びて、寝たい。

ふと思った。

もう何年恋愛していないんだっけ。

今日の飲み会だって、出会いを求めて行ったわけじゃない。浮気男について行った瞬間は、少しはワクワクした。

だけど、結局何にもならなかった。空虚さに拍車をかけておしまい。

恋愛ってどうやってするんだっけ?
もう自分の感情が思い出せない。

そもそも、私は誰かに恋愛対象に見てもらえるの?
まだ、大丈夫なの?

その問いの答えは、今晩の出来事すべてに集約されている気がした。

虚しい。痛い。疲れた。

口にしたら、その場でサラサラと砂になってしまいそうな感想は、胸の奥に涙と一緒に飲み込んだ。
泣くもんか、大人の女がみっともない。

早く家に着かないかなぁ。



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