クレーマー
辞める
それから果歩は教室へは戻ってこなかった。


いつの間にか果歩の鞄はなくなっていて「体調が悪くなって早退した」と、先生は言っていた。


そのまま何事もなく放課後になり、帰ろうとした時だった。


「知世、今日コンビニに寄って行かない?」


と、花梨が誘って来たのだ。


一瞬『そんな暇はない』と断ろうかと思ったけれど、コンビニなら帰りの道筋にもある。


それに今日の昼間の事を思い出して、一緒に帰ることに決めた。


花梨は気まずさからか他愛のない会話を続けていたが、校門から出た時不意に顔を伏せた。


「どうしたの?」


「なんだか、知世と明彦が別れた事がまだ信じられなくて」


言いにくそうに、だけどしっかりとそう言った花梨。


でもきっとそれだけじゃないんだろう。


別れた理由も花梨は納得できていないんだ。


「あたし、気が付いた時には明彦と京一郎を比べるようにして見ていたの」


2人で歩きながらあたしはゆっくりと話始めた。


なるべくそれらしく、恋愛が大好きな花梨が興味を引くように説明をする。


「好きな人と誰かを比べることなら、あたしもあるよ」


さっそく花梨はそう言って来た。
< 103 / 187 >

この作品をシェア

pagetop