わたしの朝
苦悩
悪い夢を見た。
ずっと長いこと夢を見ていたようにも思う。
彼と父に、ひたすら罵倒され叱られる夢だ。
目覚めたというのに、まだ背筋がぞっとする。
なんだかよくわからないけれど、私はそんなにダメな人間だろうか。
そうかもしれない。
そういえば、母に言われた言葉で家出したこともあった。
社会人になって3年目。
成人して半年。
無職。
障害者を支援してくれる機関を片っ端から回ったが、どこも「あなたの場合、うちではない」と言って、たらい回し状態だ。
家でも役立たず。
言われたことをメモして順番にこなすだけでほうほうのていだ。
自分を恨みたくなる。
なんでなんで…。
なんで私は病気なの?
死ぬのなんて怖くない。
でも、誰にも必要とされないのはつらすぎた。
支え支えられ、“人”はできるというのに。
私はいつまでも、おんぶにだっこなのか。
誰か誰か…。
私が必要だと言って…。
死にたいというと、決まって
「生きたいのに生きられない人もいるんだぞ」
という人がいるが、どちらも無い物ねだりなのは同じじゃないか。
苦しんでるのは一緒じゃないか。
生きていることがそんなに偉いか。
最初から簡単に死にたいという人なんていない。
考えて考えて考え通して、それでも“死”という選択肢が浮かんだ人の淋しさを感じとってほしい。
自分の価値がわからなくて、自分の存在意義を見いだせなくて、自傷したり自殺未遂をして、止めてくれる人や悲しむ人を見てやっと、自分は生きてていいのだと少し安心する。
周りからは理解しがたい悪趣味のような方法だとしても。
わぁーーーっ!
と、子どものように叫びたくなった。
現実を悪夢が邪魔する中で、温かいものを思い浮かべてみる。
お母さんに抱きしめられたい。
お父さんに手を繋いでもらいたい。
弟たちとくだらないことで笑い合いたい。
友だちとシロツメクサを摘んで遊びたい。
そして、彼の優しいキスがほしい。
胸にくれる、秘密のキスマーク。
一緒だよの約束。
お願い、消えないで。
私は意識が朦朧としても、彼に口づけし続けた。
「Hは身体を繋ぐけど、キスは心を繋ぐんだよ」
と、彼が言っていたから。
外は雨が降っていた。
そんな中、私たちはお互いの本当の気持ちを確かめ合った。
彼の短い一言がゆっくり傷を癒していく。
雨はまるで叩きつけるかのようだ。
でも心はふわふわしたものに包まれたように穏やかだった。
仲直り。
新しい1日の始まりだ。
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