御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
「そうだよな。ごめん、俺・・・どうかしてた。2人暮らしの居心地の良さを愛情と
はき違えてみたいだ」

胸が張り裂けそうになった。

だってもしかしたら今の言い方じゃ鈴城君は私の事を結婚したときよりも

好きになってくれていたかのような言い方だったから・・・

でも違うんだよ。

万が一、一緒にアメリカに行ったとしてもきっと鈴城君は気づくはず

愛情ではなく情だって事・・・・

だからこれでいいんだ。

私がこの気持ちを口に出さなければ・・・・

「そうだよ~~。それよりも残り1ヶ月。私に手伝えることがあったら
言って」

頑張って笑顔を作った。

「・・・・・ああ・・・ありがとう」

鈴城君は視線をあわそうとはしなかった。

「じゃあ・・私はもう寝るね。毛布ももらってくからちゃんと自分の部屋で寝るように」

私はソファーの下に落ちた毛布を拾い上げ自室へと向かった。

「のあ!」

私の足が止まる。

「何?」

「さっき、愛情とはき違えたかもしれないって言ったけど・・・さっきのキスは
口封じでも何でもない。のあにキスしたかったから・・・したんだ」

「・・・・大丈夫よ。気にしてないから・・・じゃあおやすみ」

私は振り向きもせず部屋に入ると毛布を抱えたまましゃがみ込んだ。

誰よりも近くにいるのに、手が届きそうで届かない。


なんであんなこと言うのよ。

「ずるいよ・・・・あんなこと言われたら期待しちゃうし、別れられなくなるじゃん」

私は毛布に顔を埋めながら泣いた。

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