恋する気持ち。
「あー!山井さんっ!お久しぶりですっ。フロア変わってからなかなかお会いできなくて。」


「んーまぁ大変だけど。よくわからない化粧品よりはマシだよ。」


そう言って優しく微笑む。

山井さんは、私よりも5つ年上の34歳。落ち着いていて、大人の男っていう感じ。
実は憧れていたりする。

「今日は早いんですね。」


「そっ。たまには早く帰らないと、嫁がうるさいからね。」


そう。山井さんは既婚者。
だから、私は『憧れ』でストップさせている。


でもやっぱり少しだけドキドキしながら、この短い瞬間を楽しみながら歩く。


そして、従業員入口を出た先には。


わかりやすく入口の目の前に停められた、誰もが知る高級外車の最高級クラス。推定何千万という黒のセダンに、長い脚を組んでもたれかかっていたのは、須賀。


入口から出てきた私を見て一瞬驚いた顔をしたけど次の瞬間には、それはそれはたいそう不機嫌な顔。


私の側まで来ると私の手をとり、自分の方へ引き寄せる。


「お疲れさま。恭華。」



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