青と口笛に寄せられて
13 私は私の道を歩きたい。


真っ暗なトンネルの中を走り続けていた。


探しても探しても出口が見つからない。
あそこに出たいのに。
私が大好きなあの場所に行きたいのに。


少しの光も見つからない。


私はずっとこのままここにいなくちゃいけないのかな。
誰かに必要されることもなく。
せっかく居場所を見つけたのに。


あの、真っ白くて幻想的な雪の世界。
その中を駆け抜ける犬たちと、ソリに乗った私。


思い描くことは出来ても、そこにたどり着けない。


ただ見るだけじゃ嫌なの。
そこにいたいの、感じたいの。


あの場所で、働きたいのに━━━━━。












ゆっくり目を開けると、そこはもう見慣れた天井。


東京都八王子市内にある少し大きめの病院で、紋別から転院してきて1ヶ月ほどが経つ。
この部屋と天井と、向かいのベッドにいる5椎間板ヘルニアで入院中の56歳主婦、南田さんの顔だけは飽きるほど毎日見ていた。


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