お願いだから、つかまえて
「ああいうこだわりの塊の完璧主義者は、ストレスも多いだろうし、理紗さんみたいな人は女神に見えるんじゃないですか。」
友理奈ちゃん…知ってはいたけど、結構言うな…
しかも的を射ている。この子が私くらいの年になったころ、どんなふうに営業部を牛耳っていくのか、空恐ろしい思いがした。
「矢田さんが理紗さんを愛してるのは間違いないと思いますよ。理紗さんはまあいっかとか言ってる場合じゃなくて、自分がどうしたいのか決めないと、このまま泥沼ですよ。あの人、理紗さんをそう簡単には手放さないですよ。」
「…それなら結婚でいいじゃないですか。」
「そういう労力を割かなくても女神でいてくれるなら、最高じゃないですか。」
うっ…
「友理奈っ、私今傷ついた!」
「図星なんじゃないですか?」
くっそう。
私も砂肝をグイっと歯で引き抜いて派手に咀嚼する。
なんかこの子と話していると、懐かしい感じがすると思ったら、香苗とちょっと似ているのだった。
香苗より、若いぶん、言い方が攻撃的だけど。
このぶっちゃけた感じは、やっぱり好きだった。
「理紗さんドライだから。切ろうと思えば、案外、あっさり切れるんじゃないですか? ダメージでかいのは、矢田さんのほうで。」
「いやー…」
「そうしたいなら長戸でもあてがっときゃいいんですよ。浮気でもしてくれたら、別れやすいでしょ。」
うううっ…
浮気をしたのは、こっちなんです…!
とは、口が裂けても言えない。