お願いだから、つかまえて
7. また…?


「ほんとに結婚することになったの。」

香苗が一応改まって、そう言った。
何も驚くことはなかった。

「そう、おめでとう!」
「ありがとう!」

きらきらした香苗の両目が幸せそうに垂れて。
ああよかったと、心の底から思う。
それから、僻みも、妬みもせずそう思えた自分にほっとした。

「式はね、親族とか、拓哉くんのほうのお偉方をメインに開くからね、友達には軽いパーティー開いて、集まってもらおうと思って。」
「うん、いいじゃん。でも一応そっちでもドレスは着るんでしょ?」
「うん、そのつもり。カジュアルめの。理紗、一緒に選んでよね!」
「もちろん。」

やったー、と言ってシャンパングラスを傾ける香苗の左薬指には、大きなダイヤの指輪が輝いている。

大きいけれど、いやらしくなく、香苗によく似合っている。

「いつ? パーティー」
「7月頭にやるつもり!」
「すぐじゃない。」
「籍は式のころにしようと思ってるから、ちょっと後だけどね。もう一緒に暮らし始めるし、早いとこやっちゃおうって。」
「はー、いいねえ、その指輪も。」
「でしょ〜」

女優の結婚会見ばりのポーズで香苗は左手の指先を顎に添え、指輪を見せつける。

「あ、でもそのネックレス。矢田さんからのプレゼントでしょ?」
「あ、うん。」

私が鎖骨の真ん中に落ちているダイヤのネックレスを、香苗は目ざとく見つけた。

「誕生日プレゼントだ。また微妙なラインついてくるね。プロポーズはなしだけど、ダイヤか〜」
「…今日ほど同じダイヤの重みの、明らかなる違いを感じた日もないわ、私。」
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