恋のお試し期間

クレープひとつにこんなばかみたいに悩む自分が嘆かわしい。

「もう1つ食べたいって顔だけど」
「まさか」
「いいよ?言ってくれたら買うから」
「ほんといいですから。移動しましょう目に毒」
「やっぱり欲しいんじゃないの?」
「ないない」

優しい誘惑を何とか断り場所移動。
レディスばかりでは悪いからと彼の好きなブランドなども見てまわり。
気づいたらもう夕方。通りで足がパンパンでお腹もすいているわけだ。
けど、やっぱり1人より2人で歩いたほうが時間があっという間で
何より楽しい。

これは佐伯が優しくてエスコートが上手いのもあるのだろうけど。

「結局俺の買い物になっちゃったね」
「私は最初からウィンドウショッピングなんで」
「そう。でも、一緒に見れて楽しかったよ」
「私も。やっぱり買い物は1人より2人かな」
「そうだね」
「あーあ。早くいい出会いないかな」

そしたら2人で仲良くショッピングできるのにな。腕とか組んで。
時々視線を交わらせてみたりして。里真は大きくため息。

「ねえ、里真ちゃん」
「はい?」

そんな里真に急に真面目な顔になる佐伯。

「俺ってそんなに駄目なのかな」
「何がですか。あ。あれですか、またキザなこと言ってからかうつもり?」
「もしかして年上過ぎるとか?やっぱり30過ぎの男って嫌?」
「え?いいと思いますけど。友達とか40の彼氏居るし」
「俺が知りたいのは君の気持ち…なんだけど」
「私も特に拘らないな」
「そう。ならよかった」

里真の返事に少し微笑む佐伯。

「…拘れるほど私はいい女でもないし」
「どうして?里真ちゃんは可愛いよ」
「佐伯さんは優しいからそんな風に言ってくれるけど。私ダイエットするまで散々
体の事でネタにされたし馬鹿にされたし女扱いもされなかったから分かります。
不摂生しまくって自業自得っちゃあそうなんですけど。だから、高望みはしない。
自分にあった普通の人と付き合って、それで、結婚とか出来たらいいなって」

自分が女としてそこまで価値がないのはわかっている。その努力も足りてないのも。

佐伯は自分とは対極にある存在。

同情とかされて優しくされて本気になって痛い目を見るのは目に見えている。

不釣合いな相手でなければ関係が揺らぐこともないだろう。
カッコイイ人とかお金持ちとかそんな人はもっと美人を選ぶだろうし。
普通を選んだつもりでも釣り合いが取れているはずなのにふられるのはなぜだ。
そこが分からない。
やはり太ってきた所為だろうか。里真は深いため息をしてさりげなくお腹の肉を摘む。




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