恋のお試し期間



「お茶とコーヒーと。あ。もし甘いものがいいならフルーツジュースとか作るけど」
「お茶ください」
「かしこまりました。席までお持ちしますのでかけてお待ちください」
「…は、はい」

最近は里真の休日に合わせお店を休んでくれている佐伯。
申し訳ないと謝ったらそうでもしないと忙しくてちゃんと会えないからと彼は笑っていた。

迎えた日曜日。

里真は迎えに来てもらってそのまま彼の部屋に到着する。
足の怪我も治ってきていて歩けるのだが、それでも佐伯曰く危ないから駄目とのこと。

「もっとリラックスしていいんだよ」
「相変わらず綺麗な部屋。私の部屋と大違い」
「…里真の部屋、行った事ないな。どんなだろう」
「汚いです」
「じゃあ俺が掃除してあげる」
「い、いいです」

片付けろと日々母に怒られても放置していたゴミや雑誌だらけの
色気もなにもない幻滅されそうな部屋に佐伯を呼べない。
お茶を飲みながら里真は視線を逸らす。この話題は危ない、と。

「映画幾つか借りてきたんだ。選んでくれる?」
「はい。わあ。新しいのから古いのまで名作を網羅してる…すごい」

どうしようか戸惑う里真を救うようにDVDの入った袋を渡す。
映画館で観る新作ではなくてもどれも名作話題作。

「ああ、イヤラシイのはないから安心してね」
「慶吾さんっ。そ、そういうの…借りたりするんですか?」
「うん。やっぱり俺も男だからさ、たまに借りるんだ」
「ええっ」

そんなアッサリ認めないで欲しい。里真は思いっきり驚いた顔。

「はははは。ウソウソ。借りないって。だって俺里真の体じゃないと興奮しないし」
「……またそんなこと」
「本当だよ」
「あ。こ、これがいいです。前に観たかったんだけどタイミング逃した映画」
「そう。じゃあ、これだ」

まだ笑っている佐伯をよそに里真は心臓がドキドキする。
タダでさえ彼の部屋は緊張するのに。セッティングを終えた彼が
里真の隣にくっ付いて座りさりげなく肩を抱き、そのまま首筋にキス。

「…んっ…慶吾さん?」
「今はまだ宣伝中だよ。本編が始まるまで暇でしょう?」
「そ、そうでもないです。私あの宣伝けっこうチェックするほうなんで」
「そうなんだ。じゃあ、邪魔しない」

これ以上甘えられたらと不安になってつい言ってしまったけど。
彼は素直に顔をひっこめてくれた。でも肩は抱いたまま。
静に宣伝を見守り本編がはじまる。


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