Beautiful Life ?

02

 父親と食事をする約束をしているというリアが宿泊するホテルのレストランに絵里は一人でやってきた。
 店に入るとグリーターがやってきて絵里は戸惑いながら店内を見渡す。予約の有無を尋ねられ「えっと」と困惑していると背後から聞き覚えのある声がして目を見開いた。

「久しぶり」

 振り返るとそこに居たのは辻合だった。
 突然の彼の登場に驚きを隠せない絵里は絶句するが、辻合はまるでここに絵里が来ることが分かっていたかのように落ち着いていてうっすらと笑みを浮かべる余裕すらあるようだ。

「久しぶり……」

 声を絞り出して答えると絵里はまだどこか緊張を感じさせる不自然な笑顔を浮かべた。

 案内されたのは窓際の夜景が綺麗な予約済みの四人掛けのテーブルだった。席に着いて先に口を開いたのは絵里だった。

「急に来てごめんなさい。驚いたでしょう」
「リアから聞いてる。さっき連絡がはいって」
「……そうだったのね」
「まぁ、なんとなく、リアが今日君に会うと聞いて予想はしてたけど」

 辻合はメニュー表に目を落としながら静かに微笑んだ。

「まったく。おせっかいなところは誰に似たんだか」
「……ふふ」

 辻合の言葉に、再会してからずっと緊張した面持ちだった絵里から笑みがこぼれた。

「似たような台詞、前にも聞いたことがあるわ」
「そうだった?」

 目を合わせると、互いにほっとしたような表情で微笑みあう。
 絵里の緊張は少しだけほぐれ、ドリンクをオーダーし乾杯を済ませると互いに会話の目的は同じだった。早速本題に入った。

「リアから聞いてると思うけど、近々再婚することになったんだ」

 辻合の告白を聞き絵里は優しい表情で頷いた。そんな絵里の態度を見て辻合はほっとして言葉を続けた。

「上司からの縁談で、実は今まで何度かこういう話をもらっては断っていたんだけど。今回はじめて受けてみることにしたんだ。それで」
「……そう」
「君のおかげだ」

 絵里はズキンとした胸の痛みを感じて、穏やかな表情から一変して強張る。そんな絵里を見て辻合は笑った。

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