Beautiful Life ?

03

 年が明け、三が日を過ぎてから絵里は西野に連絡を入れた。絵里の方から連絡を入れることも、デートへ誘うこともはじめてだった。
 混雑を避けるため夕方に待ち合わせて、初詣に行ってから以前から二人の間で出ていた正月映画を観ようとレイトショーに誘った。絵里は告白をするのなら映画を観る前にしようか観た後にしようかと、前日からずっと迷っていた。

 当日、待ち合わせは駅だった。二人で公共の交通機関を使っての移動もはじめてで新鮮だった。久々に顔を合わせた二人は互いに照れくさそうな表情を浮かべ「あけましておめでとうございます」と丁寧な挨拶を交わして頭を下げると固すぎるその雰囲気に同時に吹き出した。
 電車に乗り込むと懐かしい情景が脳裏に浮かび上がってきて絵里は口角を上げた。絵里たちが乗り込んだ電車は、エリが学生時代に通学に使っていた電車だった。

「私通学でこの電車使ってたんだ」
「あぁ、そっか」
「西野君は徒歩だったよね」
「良く知ってるね。うん、当時はこっちに住んでいなかったから」

 良く知ってるね。その言葉に、絵里は心の中で当たり前じゃないと呟いた。好きな人がどんな方法で通学しているのかなど知っていて当然だ。
 絵里は毎日のように、朝晩とこの電車に乗りながら西野のことを思い浮かべたり、友人と語り合ったものだった。その西野が、今自分の隣にいる。
 当時の淡い恋心を思い出して、急にトクトクと脈打つ心臓。相手を思う気持ちが溢れだしてきて抑えきれなくなって、絵里はこの後大胆な行動を起こすこととなる。

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