龍神のとりこ
15.可愛いリスだから
森での何日目かの夜になっていた。


「トーコ、」
何度呼ばれても絶対に返事なんてしない、
トーコは半ば意固地になっていた。
今もマントにくるまって、寝たふりを決め込んでいる。


『くちづけする度、力が戻ってきている』と言われてからだった。
トーコの中で何かがちくっと刺さった気がしていた。



それまで少しでもコハクに対しどぎまぎしてた自分に腹が立つのと
激しいくちづけの度に、それは自分への想いからではなく
龍神の力の回復のためにそうしていたのかと思うと、、

離れていたくてしょうがなくなるのだった。


かといって、危険な森の中、
コハクから完全に離れては即、、獣たちの餌食になることは
トーコにもわかっている。

だからこうして、なるべくコハクの顔を見ないよう。
話もしないようにしている。



コハクが小さく息を漏らすのが聞こえた。

トーコはぎゅっと身体を丸めた。


そばに居てくれって、
助けになるかもしれないって、

それは、ほんとに、、、そういうことだったの。。?


何かにえぐられるように胸が痛い。


もやもやがトーコの頭をぐちゃぐちゃとかき混ぜる。


< 52 / 139 >

この作品をシェア

pagetop